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フィックスターズ、量子コンピューティング向け開発支援環境を開発
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フィックスターズ、量子コンピューティング向け開発支援環境を開発

2019-12-09
プレスリリース

プログラミング支援用ミドルウェアとシミュレーション環境の情報をウェブサイトで公開

マルチコアCPU/GPU/FPGAを用いた高速化技術のグローバルリーダーである株式会社フィックスターズ(本社:東京都品川区、代表取締役社長:三木 聡、以下、フィックスターズ)は、量子コンピューティング向け開発支援環境の情報をウェブサイトで公開します。フィックスターズが開発している開発支援環境は、量子アニーリング方式のプログラミング支援用ミドルウェア(以下、ミドルウェア)と、GPU上で動作するシミュレーション環境の2つです。量子コンピューティングにこれから取り組む方や、すでに量子コンピューティングを行われている方にも有用な開発支援環境を開発し、世の中への量子コンピューティングの普及を支援します。開発支援環境の情報は、フィックスターズが運営する量子コンピューティングに関するウェブサイト、Quantum Computing Solutionsで公開します。

量子コンピューティングは、現在のコンピュータでは解けない問題を解ける可能性のある技術として注目を集めています。機械学習・AIでの計算や、金融・物流分野における組合せ最適化問題を短時間で解くことが出来ると期待されています。日本を始め、世界中の企業による量子コンピュータの開発も進んでいます。一方、量子コンピュータを活用して課題を解決するためには、量子コンピュータ特有のプログラミング方法に加え、それぞれのハードウェアの持つ制約を理解する必要があります。フィックスターズでは、「世の中の多くのエンジニアがもっと手軽に量子コンピューティングに取り組める世界を作りたい」という思いから、より簡単に量子プログラミングが可能になるミドルウェアとGPUによるシミュレーション環境の開発に取り組んできました。

1)量子アニーリング方式のプログラミング支援用ミドルウェア

現在各社で開発が進められている量子コンピュータは機種によってハードウェアの仕様や制約条件が異なります。ミドルウェアはこの負荷を低減し、ユーザーがアプリケーション開発に集中できる環境を提供します。ミドルウェアは3つの自動化により、プログラミングの効率を向上します。現在4社の機種をサポートしており、今後も継続して対応機種を拡充する予定です。

1)定式化の自動化

組合せ最適化問題を定義して数式や入力モデルをデータ化するプロセスは複雑ですが、これらの作業を自動化します。様々な入力形式に対応し、数式を変換することなくプログラムコード上に記述できるインターフェースを提供しています。

2)入力モデルのデータ化

各機種の仕様には差異があるため、使用したいハードウェアに合わせた入力モデルへの変換が必要です。ミドルウェアは定式化された入力モデルを、ハードウェアの制限を考慮した入力可能形式へ自動変換します。

3)複数の機種間の展開

同じプログラムを異なる機種間で実行する際、各機種に合わせてプログラムを変換する必要があります。ミドルウェアを使うと、プログラムコード上で使用したい機種を指示するコマンドを1行書き換えるだけで、動作させる機種の切り替えが可能です。
機種ごとに定式化と再実装を行う必要がないため、短期間で自身の課題に適した性能をもつ機種を選定することが可能です。

図1. 量子アニーリング方式のプログラミングの手順とミドルウェアがサポートする領域

2)GPUアニーリングマシンによるシミュレーション環境

手軽に量子アニーリング方式をシミュレーションする環境として、GPUアニーリングマシンを開発しています。これは量子アニーリング方式と同じ手法をGPU上で構築したもので、疑似的に量子コンピューティングを体験できます。汎用のGPUアクセラレータ上にソフトウェアで実装していますので、最適化モデルができた後に、課題に特化した専用最適化ソルバーの開発や、CUDAプラットフォームを用いた組み込みシステムへの移植を行うなど、お客様の課題と用途に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。
このGPUアニーリングマシンの最適化モデルはQUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization:二次制約なし二値最適化)で、最大8192ビット、全結合方式です。今後10万ビット規模への拡張を計画しています。

このGPUアニーリングマシンとミドルウェアを組み合わせることで、GPUアニーリングマシンを用いた開発後に他の機種へのシームレスな移行が可能になります。また、機種間をスムーズに移行できるので常に最新の機種を使用して開発を加速することができます。このミドルウェアとGPUアニーリングマシンを用いた事例を紹介します。組み合わせ最適化問題で代表的な巡回セールスマン問題のベンチマーク結果です。TSP LIB eil51という51都市間の巡回セールスマン問題の最適解をQUBO形式の最適化モデルの入力において1.1秒で解いています。この他の事例でのベンチマーク結果もウェブサイトに掲載しています。

図2. 51都市の巡回セールスマン問題をミドルウェアとGPUアニーリングマシンで解いた例

開発支援環境の開発状況を掲載するウェブサイトでは、「開発支援環境」の情報以外にも、量子コンピューティングの最新技術情報を紹介する「技術リソース」、フィックスターズが提供する「開発サービス」も合わせて公開しています。「技術リソース」は、2017年から公開を続けており、多くのエンジニアからアクセスされています。今後も継続して量子コンピュータをこれから取り組まれるエンジニアの方が技術情報やトレンドを把握できる情報を提供します。

今回発表した開発支援環境は今後一般に提供する予定です。開発状況のアップデートは、ウェブサイトで行います。また希望される方にはEメールによる案内も行います。希望者はQuantum Computing Solutions内から申し込みいただけます。

フィックスターズは、量子コンピュータの普及と活用促進による社会貢献を目指してまいります。

フィックスターズについて

フィックスターズは、”Speed up your Business” をコーポレートメッセージとして掲げるソフトウェアカンパニーです。マルチコアプロセッサを効率的に利用するためのソフトウェアの並列化および最適化と、省電力かつ高速IOを実現する新メモリ技術を活用したアプリケーションの高速化を通じて、医療、製造、金融、エンターテインメントなど、様々な分野のお客様のビジネスを加速し、グリーンITを実現しています。


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本件に関するお問い合わせ

株式会社フィックスターズ 広報担当