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量子アニーリングを使うためのクラウド「Fixstars Amplify」がリリース
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量子アニーリングを使うためのクラウド「Fixstars Amplify」がリリース

2021-02-01
プレスリリース

全てのアニーリングマシンを同じコードで効率よく利用

マルチコアCPU/GPU/FPGAを用いた高速化技術のグローバルリーダーである株式会社フィックスターズ(東証1部:3687、代表取締役社長 CEO:三木 聡)は、量子アニーリング/イジングマシン*を実行できるクラウド基盤「Fixstars Amplify」の提供を始めました。Amplifyを使うためのSDK(ソフトウェア開発キット)は、無償で配布されています。このSDKを用いてアプリケーションを開発すると、Amplifyによって様々なマシンで組合せ最適化問題を解くことができます。ハードウェアの進化や活用事例の広がりに合わせてクラウドサービスが機能を補うため、Amplifyのユーザーはイジングマシンを使うソフトウェア資産を有効活用し続けられます。

Fixstars Amplifyのサービスイメージ。SDKを使ったアプリケーションの実行時、Amplifyからイジングマシンを使う

*サービス開始時点では、フィックスターズが提供するマシン以外を使うには別途個別の契約が必要

組合せ最適化問題とイジングマシン

組合せ最適化問題は、実社会で計算ニーズの高い問題です。あらゆるモノ・コトがつながるスマートシティでも、分散型エネルギー源や物流の輸送計画などで活用が期待されています。組合せ最適化問題には、考慮すべき条件や変数が増えるほど組み合わせパターンが急増し、計算が難しくなる特徴があります。

量子アニーリングはこの組合せ最適化問題を効率的に解ける手法と期待され、その技術を基にした組合せ最適化問題専用のイジングマシンがいくつも登場しました。マシンの性能向上と実社会でのニーズから、イジングマシン活用の本格化が期待されています。一方で、マシンを使いこなすための技術的なハードルが高いこと、個別のマシンやその進化に合わせてプログラムコードを修正する作業コストが、応用するための課題でした。

Amplifyは、こうしたイジングマシンを使うソフトウェア開発の課題を解消するクラウドサービスです。イジングマシンの利用に必要な前処理や後処理といった専門性の高い工程を自動化し、同じプログラムコードを使いながらどのイジングマシンを使うか選べるようにします。ハードウェアの性能を引き出すソフトウェア高速化を得意とするフィックスターズの知見を数多く組み込んでおり、簡単でありながら効率的にマシンを扱えます。新しいイジングマシンの登場や進化にもクラウドが機能を拡張して補い、Amplifyのユーザーが開発したプログラムコードや知見を有効活用しつづけられるサービスとして運営します。

量子アニーリング/イジングマシンを使ったプログラムコード開発の流れ

イジングマシンが登場した当初は、扱える組合せ最適化問題の規模を表すビット数が少なく、実際の社会課題に適用するのが難しいのが実態でした。しかし、各社が開発するハードウェアは進化を続け、既に実問題が解ける基盤が整いつつあります。例えば、GPUを使ったアニーリングマシン「Fixstars Amplify Annealing Engine(AE)」では、10万ビット超の問題が扱えます。Amplifyによって、イジングマシンによる社会課題の解決を加速していきます。

価格

Amplifyは、研究や開発などに無償でお使いいただけます。イジングマシンには、Amplify AEが標準で利用できます。現在、Amplify AE以外のイジングマシンを使うのには、ユーザーがマシン提供事業者と別途契約する必要があります。
商用で運用しているシステムでAmplifyをお使いいただく場合、1システム当たり税別10万円/月からご利用いただけます。専用のAmplify AEサーバーをご利用する場合は、サーバー1台あたり税別100万円/月です。詳細は料金ページを確認ください。
Fixstars Amplify料金ページ:https://amplify.fixstars.com/pricing

慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科 田中宗 准教授のコメント

慶應義塾大学の田中宗 准教授から、Amplifyのリリースにコメントをいただきました。田中准教授は量子アニーリング等イジングマシンの研究開発をする専門家として、情報処理推進機構未踏ターゲットプロジェクトマネージャーやモバイルコンピューティング推進コンソーシアムAI&ロボット委員会量子コンピュータ推進WG顧問等としてもご活躍されています。

「量子アニーリング等イジングマシンの性能に関心をお持ちの方々から『参入障壁が高い』という声を寄せられることが多いです。イジングマシン利用の際に必要となる困難な処理がありますが、その処理の自動化技術を備えたAmplifyを使うことにより、技術面での参入障壁が緩和されることが期待されます。また、非商用利用に対して無料となることにより、これまでイジングマシンを用いた研究開発に取り組んで来なかった方々の参入を促進し、新しい研究開発への挑戦が加速されると考えます。イジングマシンの斬新な活用シーンの探索が進み、イジングマシン分野の今後のますますの発展に寄与することを願っております」

三木 聡代表取締役社長のコメント

フィックスターズの三木 聡代表取締役社長は、次のようにコメントしています。

「2017年から取り組んできた量子アニーリング等イジングマシン関連の研究成果を、クラウドサービスという形でリリースできることを大変嬉しく思います。本サービスによって、誰でも手軽に、様々な組合せ最適化問題を解くアプリケーションを研究・開発できるようなります。1人でも多くの方が、1つでも多くの実問題を解くアプリケーションを作成できるようになり、より良い社会の実現に多くの貢献ができると考え、本サービスを日々向上させていきます。本サービスを活かして、世界中で多くのイノベーションが生まれることを期待しています」

*量子アニーリング/イジングマシンについて

イジング模型と呼ばれる数理モデルを使って組合せ最適化問題を解く専用マシンをイジングマシンと呼びます。量子アニーリングもイジング模型を使うため、米D-Wave Systemsによって商用提供されている量子アニーリングマシンもイジングマシンに分類されます。


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本件に関するお問い合わせ

株式会社フィックスターズ 広報担当